桜の幹で紙を染めています。紙にふさわしい詩歌を選びました。桜色に衣は深く染めて着む 花の散りなむ後の形見に(桜色に衣を深く染めて着よう。桜が散った後の形見として)古今集 紀有朋 (「深く」は思いの深さの意と解釈しましょう)
始めて識りぬ。春風の機上に巧みなることを。唯だ色を織るのみに非ず。芬芳をも織る。(初めて知りました。春風が機織りの名人であることを。春風はただ素晴らしい色を織りだすだけでなく、香しい香りまでも織り込んでいるのです。)源英明「花飛如錦」の一節。
織ることは何れの糸よりぞ、唯だ暮(ゆうべ)の雨。裁つことは定まれる様なし。春の風に任せたり。(散った花弁は色とりどりの色で織った錦のようです。その意図は昨夜の雨なのです。定まった型で裁ってはいません。それは春風に任せているからです。菅三品「落花散如錦」の一節。