からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ 在原業平
唐衣の様に着続けてなじんだ妻が都にいるので、遙々きた旅を悲しく思います。
あやめさく水に映ろふかきつばた 色は変わらね 花のかんばし 詠み人知らず(結城朝光?)
あやめが咲き水面が映っている杜若の色も変わっていません。どの花もよい香りがします。
うちしめりあやめぞ香るほととぎす 鳴くや皐月の雨の夕暮れ 藤原良経
しっとりとした気候の中で軒の菖蒲が香っています。ほととぎすが鳴く皐月の雨が降る夕暮れです。
かきつばた 衣にすりつけ ますらをの 競ひ狩りする月は来にけり 大伴家持
杜若の色を染めた衣を着重ねした男たちが、薬狩りする月がやってきました。
一首目は「かきつばた」の折句。二首目はアナグラムで、奥州藤原氏の財宝の隠し場所がわかるといわれています。三首目は、端午の節句にあやめを軒に挿し飾る習慣を元にしています。四首目は端午の節句に、男たちが薬草を採る習慣を詠んでいます。
杜若(かきつばた あやめ しょうぶ)の歌には、現代にはない習慣や謎が詠みこまれていて、花は不思議な雰囲気をまといます。