楽器を奏でる詩歌を四首集めました。
行く方も忘るるばかりあさぼらけ ひき留むめる琴の声かな 『堤中納言物語』より
随分管弦還自足 等閑篇詠被人知 気分に任せた即興の演奏は、型通りの演奏よりも自然と満足することがあります。なにげなく詠んだ詩歌が、苦吟したものよりも人に知られることがあります。 白居易(楽天)の師の一節。
落梅曲舊脣吹雪 折柳聲新手掬煙 笛の古曲「落梅」を奏でると白梅が散り、唇は雪を吹いているようです。琴の古曲「折柳」を弾きさわやかに歌うと、弾く手には青く煙る柳が結んでいるようです。 菅原道真の漢詩の一節。
侘ぶ人の住むべき宿と見るなへに 嘆き加はる琴の音ぞする 良岑 宗貞