2021 香り

色よりも香こそあはれと思ほゆれ 誰が袖触れし宿の梅ぞも    詠み人知らず

 花の色よりも香こそに情趣を感じます。我が家の梅の香を袖に移したのはどなたでしょう。

折しもあれ花橘の香るかな 昔を見つる夢の枕に   藤原公衡

 折しも橘の香りがします。昔の夢を見ていた枕元に。

涼しやと風のたよりをたずぬれば 茂みになびく野辺の小百合葉   萱齋院

 風のたよりに涼しい風が届きました。その元を訪ねると、茂みの中で野生の百合に出会いました。

藤袴寝覚めの床に香りけり 夢路ばかりと思ひつれども   登蓮上人

 藤袴が寝覚めの床で香っています。夢の中でのことだと思っていたのですが。

香りにまつわる歌を四首集めました。