名句 a wise saying
話し盡す、山雲海月の情。真の知己が山上の白雲や海上の明月にも似た、清浄で風雅な思いを心底話し合うこと。『碧巌録』より。墨書してぼかし染めで山水を表現しました。次の「山雲海月の情 2」と比較してご覧ください。抹茶色の正絹の軸。軸先は陶製。
話し盡す、山雲海月の情。こちらは白抜きの技法で書いています。上段は遠山のぼかし染め。中段はグラデーション。下段は月の光の反射をむら染めしています。濃い灰色の正絹の軸。軸先は玉虫色の陶製。
寒青 かんせい 寒さの中で緑を鮮やかにする、松野強さ、生命力を表す言葉です。古くは漢の郭憲『洞冥記』や宋の徐鉉「北苑待宴雑詠」などの中で使われています。高倉健さんが好きだった言葉としても有名です。マットにはイタリア製のシルクサテンを使いました。オールドオリーブの額。
煩を銷して天を楽しみ、鬱を散じて生を護る。友人宅に伝わる増上寺椎尾辨匡僧正様の扁額「散鬱護生」に四字足して、八字の作品に。という依頼に応え、おおけなくも「銷煩楽天」を作文しました。津名紙、ユーカリの草木染め。萱簀漉き。萱簀で漉いた紙は簀の目がはっきりと出て、存在感があります。額のマットには網代編みを使用。これまでの作品とは異なる、重厚な雰囲気に仕上がりました。
閑(しづ)かに坐して蕉風を閑(しづ)かに坐して松風を聴く。出典は不明ですが、古くから茶掛けの書として揮毫されてきました。「松風」は茶道では、湯の沸く音「松籟」を意味しますが、文字通り松の梢を吹き抜ける風ととらえてもいいでしょう。左右に唐草の布をあしらった、変形の明朝仕立て。軸先はベージュの陶器製です。作品の周りには2㎜の覆輪が施されています。昨年から書けるようになった白抜きの技法です。拓本ではありません。青墨で何度も染め、、深みを出しました。
此の夜、一輪満てり。この夜、一輪の名月の清浄な光が、行き渡らないところはありません。宋代の雷庵正受編『嘉泰普灯録』より。禅語では「佛性の励行が世界を照らし、普遍である。」という霊験をあらわします。月影を見ての素直な感慨としてこの一句の美しさを、書で表現しました。白抜きの技法とぼかし染めで、幻想的な雰囲気が出せたと思います。天地に波頭文様の布をあしらったモダン装丁。作品の周りには2㎜の覆輪が施されています。軸先は青い陶器製。
乗月(じょうげつ)「月に乗ず」月影に乗じて、物事を進めれば捗るでしょう。白抜きの技法とぼかし染め。友人の祖父さまの遺品の太筆で、力強く書いてみました。60年前の、深みのある大島紬をマットに使いました。
蘇軾の七言古体詩「送沈逵赴江南」の一節。(相逢うて手を握り一たび大笑す)同年生まれの旧友との別れを惜しむ一句です。豪放磊落な二人の男の友情が、文字で表せないか、いろいろ試す中で、この白抜きの技法を使うことにしました。マットの生地は鰹縞の着物を使いました。額縁はオールドオリーブ。